ある町工場の2代目の息子さん(50歳)。先代であり父親を亡くし、父親名義の口座から葬儀費用を引き出そうとしたところ、窓口の銀行員に「残念ですが、今回のお引き出しは対応しかねます」と言われてしまいました。いったいなぜなのでしょうか。
まず、相続が発生した時の大まかな流れ。
①死亡診断書の取得
②死亡届の提出と火葬許可の申請
③埋葬許可書の取得
④各種手続き(勤務先・契約関係等)
⑤相続人と相続財産の調査(遺言書の確認等)
⑥遺産分割協議
⑦銀行、保険、不動産、株式等の各種手続き
⑧立替費用等の清算
先ほどの流れの中で③までがかなりバタバタします。特に葬儀は緊急で費用がかかります。しかし、こういった緊急費用を引き出せないケースがあります。
この2代目の息子さんは、つい先日先代である父親を突然の事故で亡くしました。息子さんは葬儀費用を引き出そうとしました。父親がいつも仕事で使っている銀行とは別のプライベート用口座から100万円を引き出そうとしました。
窓口の行員から100万円の用途を尋ねられました。「息子さんは正直に父親の葬儀費用です」と答えたところ、しばらくして行員の上司が「残念ですが、今回のお引き出しは対応しかねます」との一言で、結局引き出せず。
銀行は名義人の死亡を知ったら、口座を凍結しなければなりません。理由としては2点。
1、相続財産確定のため
2、揉めことを防ぐため(相続人全員の共有財産となるため)
こうした預貯金の緊急時の引き出しに対応できないトラブルが多く発生していることを受けて、2019年7月1日に「預貯金債権払の戻制度」が施工されました。
これは、遺産分割協議をする前であっても、相続人全員の合意がなくても、家庭裁判所の判断を経ずともがなくても被相続人の口座から払戻ができるというものです。
ただし、この「預貯金債権払の戻制度」を利用するにあたり注意が必要です。借金が有無などわからずに利用してしまうと、引き出した相続人は相続財産を受取ったとみなされるため相続放棄ができなくなります。
そういったときに凍結されないお金の準備として生命保険で対策することが重要かもしれません。
コメントを残す